STORY
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森雪之丞

キミの斜め後ろにホコロビがある
ほつれた紐や針金が数本
空気から食み出している

ホコロビを避けながら愛しあった
崩壊の予鈴を喘ぎ声で殺しあった
やがて
冷蔵庫の奥で発火したマッチのように
短く青白くキミは燃えた
八月は幻
そんなこと大人になれば誰でも知ってる
八月は幻
だからボクは詩人になりすませた
奔放なキミが
不意に そんな涙をこぼすまでは

ベッドのどこかにシコリがある
さっき抱きあった時ごろごろと
脇腹の辺りで邪魔だった小さな塊

シーツに潜って
どうやらキミは確かめている
幻と現実を繋いだ結び目が
まだ解けていないことを








森雪之丞

幻の世界など何処にもない
そこにはただ
美しい夢を映し取ろうとする
ひび割れた鏡があるだけ

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