STORY
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江國香織

十二月の鏡には
十二月の女が映る
十二月の女は青白く
はだかでふるえている

十二月の女は着飾ってでかける
あたたかな場所に
気心の知れた仲間と
十二月の女は安心していられる
しんから幸福そうに見えるし
たぶん彼女はしんから幸福なのだ
でかけた先に
鏡さえなければ

そこがどこであろうと
そばに誰がいようと
十二月の鏡には
十二月の女が映る
十二月の女は青白く
はだかでふるえている








江國香織

小説を読むことは
つまり
死ぬ準備をすること
いつか
この世のすべてに別れをつげる
練習をすること

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