STORY
STORY

江國香織

けさ
めがさめて
さいしょに
たこを一匹
まるごと茹でて
たべたいと
おもった








江國香織

大切な古いぬいぐるみを
しっかり抱いていたつもりがうっかり
手を離して失くしてしまった
とばかり思っていたのに
いつのまに私は捨てられたのだろう
そして
いつから私は誰かの大切な
古いぬいぐるみだったのだろう
気がつけば道にころがっていた
側溝に落ちたそのままのかたちで
ただじっと青空を見ていた
あたりはさむざむしく冬で
人々の足元にころがっている
ぬいぐるみの私は
でも心の底の底のどこかで
愉快な気持ちがしている
やっぱり
と思っている

書誌情報
書誌情報
本書を購入する
本書を試し読みする

このページのトップへ