イベント
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江國香織と森雪之丞の連弾詩集「扉のかたちをした闇」の発売を記念して行われた一夜限りのスペシャル朗読イベントは、1月23日、東京、日本橋三井ホールで、満員の観客を迎えて開催されました。

江國香織、森雪之丞のほか、俳優の神木隆之介、加藤貴子、そしてピアニストの園田涼という、豪華なスペシャルメンバーが加わり、詩集のなかからたくさんの詩を4人がかわるがわる朗読。森による構成や、小林香による演出にさまざまな工夫が凝らされていて、それはもう朗読会というよりは、完全なる舞台公演といっていいものとなりました。
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まずは、暗闇から登場した、江國香織と森雪之丞が、「ご挨拶の詩」から読み始めます。園田涼の繊細なタッチのピアノの音色とともに、一気に詩の世界に引き込まれてしまいます。

そして、1年12か月、それぞれの月をテーマに二人が書いた「詩で綴られた12か月」のパートが、詩集と同じく八月の詩からスタート。江國の「八月の男は」のあと、森の「八月は幻」を、神木隆之介が読み上げます。2016年の最大のヒット映画『君の名は。』の立花瀧役を見事に演じた神木の声に、会場につめかけている神木ファンが思わず息をのんでいる様子が、ひしひしと伝わってきます。
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次々と詩が読まれていくなか、舞台の中央に置かれている、引き出しがたくさんついた、箪笥のようなセットから、いろいろな小道具を出演者は取りだしていきます。「いったい何をやってるんだろう」と見つめると、それはすべて詩の内容とリンクしているものなのだということがわかってきます。江國の10月の詩である「ナイロンってなに」を読みながら加藤貴子が登場。江國が引き出しから取りだしたコートが、ステージ上に吊されます。「実にまったく 湿ったウールの匂いはかなしい けれど私は依怙地なので 雨の夜でも 断固 ウールのオーバーを着て でかけます」で終わると、加藤が吊されたコートをハンガーごと持っていくというように。
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また、引き出しから取りだされて組み立てられた翼のオブジェをバックに、神木は「十一月の旅人には翼がある」を朗読。これがなんと、舞台正面から見ると、まるで神木の背中に翼が生えてしまったように見えるのです(でもこれは斜めから見た人はわからなかったかもしれません)。
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そしてステージのバックスクリーンには、映像や文字が、詩と連動するようにしっとりと映し出されていきます。4人は詩を読むたびに、位置を移動していき、12か月のパートは終了します。
暗転のあとは、スクリーンに画家アンリ・ルソーの有名な作品「詩人に霊感を与えるミューズ」が映し出されます。そこで登場した神木は「ねえミューズ なぜ詩人なんかに霊感を与えるのですか?」と森の詩を読み上げます。ひとつの絵画作品からインスピレーションをうけて、江國、森のふたりが詩を書いたわけですが、そのふたりの詩の違いに、詩ってなんて面白いんだろうと思ってしまいます。
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そして次のパートは、いよいよ「連弾詩」。詩集では、江國が書いた詩を受けて、森が詩を書いています。江國の「空港と自由」という詩は、「空港でのむレモンティは きまって薄く どういうわけか生ぬるい」で始まり、「レモンティ」がたびたび登場します。それを受けた森の詩「ひとりになるため誰かを愛して」では、詩の最後に「それにしても機上のレモンティは どうしてこんなに熱いのだろう 冷めるのを待つ数分だけが 至福の休息だと言わんばかりに」で終わります。なんてロマンティック。

江國の「愛の記憶」は「わたしたちはくっついて眠り くっついて遊び くっついて食事をした あなたにくっついたまま わたしはあなたに絵葉書を書いた」と始まります。そして森の詩「302」では「あの302号室でも 女は男にくっついたまま どっか遠くへ逃げちゃおうよと 囁いているのだろうか」と連なっていくわけです。

このような詩の連弾が、4人の美しい声でつぎつぎと行われ、もう、すっかり観客は言葉の魔法にかかってしまっているように見えます。
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そして園田の流れるようなピアノソロのあと、いよいよ朗読はクライマックスを迎えます。詩集未収録の、7歳の少女の世界を描く「彼女は今全力で」を神木が一人で読み、同じく未収録の「あなたに泣いてほしくて」を全員で朗読。「死んだときあなたに泣いてほしくて」と結ばれます。最後は、「生きる」という言葉を4人で繰り返し、ステージ中央に集まった4人は本を閉じます。そして、箪笥を4人でぐるっと回すと、そこには、「扉のかたちをした闇」が本棚にたくさん並んでいて、そこにそっと本をしまい、4人はステージを去りました。そしてステージには、詩集の表紙を思わせる扉のかたちをした青い闇が浮かびました。
終演後、鳴り止まない拍手。
最後は、5人のメンバーがそれぞれ握手を交わして、感動的なフィナーレです。
「ありがとうございました!」と森雪之丞が感謝の言葉を述べて、さらに大きな拍手とともに、一夜限りのスペシャルイベントは幕を閉じたのでした。
「ぞくぞくするほどよかったね。サイコー」「神木くんの美声、たまんないね」「加藤貴子さんの、大人の魅力たっぷりの読み方もよかったね」「森雪之丞さん、朗読めっちゃうまい!」「江國香織さんの声ってとてもすてき」「朗読とピアノってほんとうにあうね」などなど会場をあとにする観客の会話が聞こえてきました。そして、会場で販売されていた、詩集「扉のかたちをした闇」は、飛ぶように売れました。

買って帰った人は、きっと、家に帰って、4人が読んだ詩を、その声を思い浮かべながら読み耽ったのではないでしょうか。そして本を買って帰った人も帰らなかった人も、きっと、その夜は、夢のなかで、闇の中に、かすかな光がもれている扉が出てくる、幻想的でロマンティックな夢を見たのではないでしょうか…。
出演者
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