編集・出版社営業・書店員・翻訳者が[ロボット・イン・ザ・ガーデン]を語ってみた。
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30代ダメ男・ベンに共感してしまう理由って?
あと、序盤は夫婦の崩壊寸前が描かれるのですが、共働き家庭の主婦としては、かなり身近な話ですね。
と言うと?
周りのママ友の話を聞いていても、ベンほどじゃないけど家のことを全くやらない夫は多いみたいなので。
あぁ、ごめんなさい(笑)。
まして無職だったりしたら……(笑)。イギリスの近未来が舞台だけど、日本人でも共感できて、外文特有のハードルの高さが殆ど無いのも良いのかもしれません。
ベンの成長を描くだけでなく、奥さんとのところを取り出せば恋愛小説でもありますね。そういえば、外国文学とか翻訳ものって意識はまったく持たなかったですね。
二人の話を聞いて、思い当りました。僕はベンがダメ男だからと言うよりも、エイミーが「ちゃんとした人」過ぎて、逆にベンに感情移入したんだ。
ちゃんとした人過ぎる?
仕事が出来過ぎる人って、出来ない人の気持ちが分からないことが時々あったりしません?
もう少し詳しくお願いします。
スポーツとか勉強にもそういうことあるけど、凄く出来る人って、出来ない人が何故出来ないのか分からないことがあるんですよね。「なんで、こんなことが出来ないの?」って。だけど出来ない方は手抜きをしている訳じゃなくて自分なりに頑張っているけど出来ない訳で、そこで「なんで?」って訊かれても自分だって解らないっていうか、それが分かれば苦労しねーよ、みたいな。
それで、ダメ男ベンに共感した、と。
僕自身、余り頭の回転が早い方ではなくて、仕事も勉強もスポーツも、「1回教えられただけで出来ちゃう奴」が羨ましくてしょうがなかったから、エイミーにチクチク攻められるベンに味方したくなったんです。
だけどベンは、ただダメなだけじゃなくて優しいですよね。得体の知れない壊れたロボットの為に旅に出て、それこそ『のび太の恐竜』ばりに四苦八苦する。
斎藤隆介の絵本『モチモチの木』(岩崎書店)に 《 にんげん、やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、きっとやるもんだ 》 っていう名セリフがあるんですけど、ベンは確かに色々とダメな男かも知れないけど、他者を思い遣る心は持ってますよね。
確かにそうですね。
それって仕事よりも大事な事な気がしますが実生活ではなかなかそうも言ってらんなくて、そんな面でもベンを応援したくなるのかも。
という訳で、この物語はタングとは友情小説にもなり、また二人の旅も読みどころでその部分はロードノベルであって、それにタング自身の謎がストーリーの牽引役になっていて、グリコのキャラメルじゃないけど一冊でいろいろ楽しめる小説だと思いますね。

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