私は夜行をこう読んだ! 皆さまの声 森見登美彦氏が特に唸ったベスト10公開中!
受賞作タイトル

私は解く謎をひとつに絞りました。『「夜行」に描かれている女性は誰なのか?』私には、その女性は自分自身であるように思えました。作中で「夜行」として描かれたすべての地に、自分も行ったことがあるから。ただそれだけの理由です。いっそ「なんとなく」という言葉を付してしまっても構いません。

自分の行った地を思い浮かべながら読んでいくと、妙な心持ちになりました。そんな場所もあったかもしれない。私の記憶の中の道で、作中の建物が現実に紛れて、建ち並んでいきました。夜と同じくらい、記憶は曖昧であると思います。行ったことがなくても、何度も何度も読み返せば、自分も行ったことがあると錯覚してしまう事はあると思います。誰にでも起こりうることではないでしょうか。

のっぺらぼうの女性は、自分、つまり読者自身である。それが私の答えです。「夜行」を読む上で、私は自分の中で約束を取り決めました。どんなに続きが気になっても夜の間だけ読む。それだけは守ることにしました。私の「夜行」はつねに夜でした。永遠の夜の中で読み終えられたのが、なんだかとても嬉しかったのです。

私の夜は、まだ明けそうもないです。随分長い夜になってしまいそうです。私はまだ、この夜の中にいます。

 たいへん魅力的な文章で、この企画を通じて読んだ感想の中では一番心惹かれました。『夜行』について述べた文章であるはずなのに、『夜行』の一部であるかのような、『夜行』の世界で登場人物が語っているかのような印象を受けます。まるで我々も『夜行』の中にいるかのような感覚にとらわれます。ステキな文章をありがとうございます。

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