私は夜行をこう読んだ! 皆さまの声 森見登美彦氏が特に唸ったベスト10公開中!
受賞作タイトル

我々は実は闇の中を孤独にさまよっているのではないだろうか。だが、その事実が寂しく虚しく楽しみがないため我々は闇から目をそむけ、闇の中で夢を見ているのだ。我々が見ているものは現実なのだろうか夢なのだろうか。そもそも私たちの存在はどこにあるのだろうか。

光と闇。曙光と夜行。この対立した2つの世界にはもしかしたらもう1人の自分が存在していて、全く違う生き方をして暮らしているかもしれない。夜行の旅をしていた登場人物たちはそうであると感じた。その中で、行方不明になった長谷川さんは異質な存在であるように感じた。彼女は銅版画やどの登場人物たちの夢にも共通して存在している。そこから私は長谷川さんという存在が登場人物全員で一致しているものの登場人物それぞれの夢の中での憧れや理想を投影し具現化した存在のように思えた。だからこそ、長谷川さんは理想でありながら鬼にもなり得るのだ。

闇は暗く無限に続いていて孤独である。しかし、闇が無限であるからこそ我々は自由にどこにでも行ける。それが他の人の闇であっても。

この作品の登場人物たちの旅はただ電車に乗ったりしながらする旅ではなく、誰かの闇の夢を共有し交わる旅なのではなかろうか。これこそが「夜行」の旅であると私は思った。

 『夜行』の世界にはしっかりと踏みしめられる土台がありません。その不安と自由について書いていただきました。「長谷川さんは理想でありながら鬼にもなり得る」というご指摘も納得です。同じことは長谷川さんと対になる岸田画伯にも言えるかも。そう考えると、また色々と想像が膨らみますね。

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