私は夜行をこう読んだ! 皆さまの声 森見登美彦氏が特に唸ったベスト10公開中!
受賞作タイトル

文豪・森見登美彦氏がこねくり回すサーガに、新たな夜の娘が加わった。これまでの作品と同じく『夜行』もまた、京都近辺の広大な森見宇宙を形成し、拡大する。他の作品と『夜行』を結ぶ通路は柳画廊だけではない。百鬼とは女子高生の姿をした鬼であるかもしれず、登場人物の中に潜む鬼であるかもしれない。

だが、実のところ、その正体は狸である。絵の中の女性も狸である。「なんで狸? せめてきつねじゃないの?」「こんな不気味な世界が狸の好みだろうか?」など、11番目以降の疑問が湧くのを禁じ得ないかもしれない。だが、例えば、夷川早雲がさらなる暗黒面に転落したような闇の帝王狸も、広い狸界には存在しよう。魔境の夜に口を開けた暗室の闇に、そんな狸が棲みつくのもごく自然なことだ。明けない夜に囚われて、登場人物たちは永遠に騙され続ける。

『夜行』の構造は『四畳半神話大系』と同じである。量子論の多世界解釈によれば、岸田の作品は「夜行」と「曙光」の他にも多くの連作が描かれたと考えられる。すなわち、その一部を挙げれば、「暁」「正午」「おやつの時間」「夕方」などであるそれらの中には、明朗愉快な狸たちが面白き事ばかりをして暮らす世界もあるに違いない。

その世界の中で長谷川さんは言うだろう。「世界はつねに正午なのよ」「世界はつねにおやつの時間なのよ」彼女はまだ三時のおやつの中にいる。

 反則技すれすれ(?)の楽しいご意見でありました。こういうのも、いいのです。私の小説はすべて私の妄想宇宙から出現したもので、すべてどこかでつながっていると考えるなら、「実のところ、その正体は狸である」という大胆な仮説もまた正しいかもしれないのです。

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