映画化もされた〝イヤミス〟の話題作「暗黒女子」でブレイクした秋吉理香子さんの 新作『ジゼル』は、小説版「ブラック・スワン」ともいえる華麗なるバレエ・ミステリー。 バレエを題材にした小説ってあまりないけど、現役のバレリーナの方が読んだら、いったいどんなふうに感じるものなの!?
ということで、東京バレエ団のプリンシパルを務める人気バレリーナ・上野水香さんと秋吉理香子さんの対談をセッティング!
『ジゼル』の誕生秘話からバレエ界の裏話まで、とっておきの話を聞いてきました。

『ジゼル』誕生秘話

――おふたりは初対面ですか?

秋吉理香子(以下秋吉) ステージは拝見したことがあるんですが、お話させていただくのは初めてです。

上野水香(以下上野) 『ジゼル』を読ませていただきました。手に取ったとき、まず〝ジゼル〟というタイトルからどんな物語になるのか、想像ができませんでしたが、読み進めていくと、なるほど! これがバレエの演目「ジゼル」を題材にした小説か・・・と腑に落ちました。バレエの「ジゼル」のストーリーとリンクするように物語が進んでいくんです。その手法がすごいな、と思いました。

――バレエをやっている人にとって「ジゼル」とは、どのような意味合いをもつ演目なのですか? また、バレエファンは「ジゼル」のどこに魅了されているのですか?

秋吉 わりと有名な演目ですよね。代表作にしているバレリーナもバレエ団も多い印象があります。

上野 古典的でありながらドラマティック! ロマンティックバレエの伝統を守る演目です。私自身は2014年以来踊っていませんが、ずっと踊りたいと思っていました。この小説を読ませていただいて、やはり「ジゼル」っていいな、ぜひ踊りたい!と気持ちが高まりました。

――最初から「ジゼル」を題材にするつもりだったんですか?

秋吉 バレエミステリーを書こう! 何か観ないと! それが入り口でした。私自身バレエはくわしくないですし、トウシューズっていいな、バレエを踊れたら素敵だな、ってふつうの女の子が好きな程度。たまたまいちばん近い日程で観に行ったのが「ジゼル」だったんです。一幕と二幕のシンプルな構成でありながら、すごく深い物語。みんなの好きなラブストーリーでもあるし、美しいゴシックホラー調でもあり、キャッチー。即決でした。バレエの奥深い芸術性にも感銘を受け、バレエを題材にした映画もたくさん観ました。

――お気に入りの作品はありますか?

秋吉 「ホワイトナイツ/白夜」(日本公開、1986年)が印象に残っています。旧ソ連からアメリカへ亡命したバレエダンサーの物語で、政治的、社会的メッセージを含んだ内容に衝撃を受けました。

上野 私も好き! 主演のバリシニコフもソ連から亡命したダンサー。国を捨ててでも極めたいものがある! そこまでのロマンをもっていたからこそ、生まれたスターだと思います。バレエの古き良き時代を描いた物語です。最近観た作品では「ブラックスワン」(日本公開、2011年)が印象に残っています。好きっていうよりは、怖かった。バレエダンサーの私からすれば、「いや、ここまでじゃないですよ(笑)」って。ハンブルク・バレエ団の芸術監督、ジョン・ノイマイヤーさんもバレエを冒涜してる! って激怒していたと聞きました。それくらいインパクトがあったってことです。「ブラックスワン」つながりで、あの映画の振付師を務めたバンジャマン・ミルピエを追ったドキュメンタリー「ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男」(日本公開、2016年)はよかった! ミルピエはナタリー・ポートマンの夫として名を知られた方も多いと思いますが、この作品では彼の手によってバレエ団が生まれ変わっていくようすが描かれていて、そのディレクション能力もさることながら、カンパニーはやはりディレクションありきなんだな、と再認識させられました。「愛と喝采の日々」(日本公開、1978年)も大好きな作品。スターダムに上がっていく人、引退していく人・・・さまざまなダンサーのありようをていねいに描写していて、同じダンサーとして胸に迫るものがありました。

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