『いま、会いにゆきます』『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『そのときは彼によろしく』『こんなにも優しい、世界の終わりかた』など、 次々と大ベストセラーを生み出す人気作家、市川拓司さん。その創作の秘密はどこにあるのか? 最新作『MM』はどうやって生まれたのか? 市川作品の大ファンだという女優・樋口柚子さんがせまります!

浮かんだ映像を実際に演じながら書く!
 

樋口柚子(以下樋口) 作家さんが時間をかけて書いた作品を、ほんの2、3時間で読んでしまうのはもったいないというか、本当に贅沢なことだといつも思います。今回の『MM』はどれくらいで書き上げたんですか?

市川拓司(以下市川) 今回は早かったですよ。2か月くらいで一筆書きのような感じ。『恋愛寫眞 もうひとつの物語』も『いま、会いにゆきます』も早かった。イメージが浮かんだからあっという間。でも、だいたい最初のイメージと違うものになっているから、自動書記と呼んでいます。

樋口 2か月!? どうしてそんなに早く書けるんですか?

市川 すべて見えているからです。うちは両親ともにものづくりの家系なので、そのアドバンテージを使って、自分は小説を書いています。たいていの映画監督は、どういう画が撮りたいか見えていて、それに近づけていくんですが、自分もそのたぐい。ここは俯瞰、ここは引き、って浮かんだ映像に沿ってみずから演じています。男、女、子ども、それぞれの声を発しながらジェスチャーも入れて書くのでうるさいです(笑)。

樋口 『恋愛寫眞』に登場する静流のセージ色のスモック、桜色のワンピースに生成のカーディガン、『そのときは彼によろしく』に出てくる花梨の髪の色が蜂蜜色など、服装や色の描写がとても好きです。どういったものにインスピレーションを受けていますか?

市川 たぶん映画でしょうね。1960年代、70年代の女優さんがベースになっているからオーソドックスなワンピースが多い(笑)。だから、いまはやっている洋服はあまり知りません。色については小さいころから千代紙を集めるのが好きだったんです。何十枚も集めて、近所の女の子たちとよく交換会をしていました。ビー玉も大好きだし色フェチなんです。

樋口 『MM』のモモが着ていた赤のレザージャケット×パンツスタイルはスタイリッシュでした。

市川 レザージャケットは『恋愛寫眞』のみゆきも着ています。これは自分の中でかっこいい女性だけにゆるされるスタイルなんです。

樋口 こんなにもロマンティックなラブストーリーが次々と書けるのはなぜでしょうか?

市川 それはぼくがロマンティックだから(笑)。ラブストーリーのほとんどは実体験と願望です。自分のなかではあたり前のことでもどうやら世間とはずれていたようで、『いま、会いにゆきます』は前半部分のほとんどが奥さんとの実話なんですが、それを取材で話すと「恥ずかしくないんですか?」ってよく言われました。自分の中では奥さんのことを好きだ、好きだ、と言うことはまったく恥ずかしいことじゃないんです。愛と平和が好き、心の底から言えます。

樋口 みんな市川さんの作品を読めば、世界が平和になるのに! って、いつも思うんです。だから、会う人、会う人に薦めています。

市川 そう言ってくださるのは、涙が出るくらいうれしいです。信じられないくらい平和が好きで、そこが自分の小説の根底にあります。「世界の優しさの総和を増やす会」というのを勝手にやっているんです。こんな時代に、優しくしようよ! って叫び続ける人がいないとなし崩しになってしまう。自分は小説を通して、優しさを返していきたいと思っています。

樋口 私も女優という仕事を通して、大きな優しさを発信していきます!

  • 本書を購入
  • 本書をためし読み
  • あらすじ中学3年生のぼくは、夏休みのある日、駅前通りの本屋で「ハリウッドで脚本家になるための近道マップ」という600ページもある翻訳本を立ち読みしていた。
    本に没頭していると急に肩を叩かれ、ぼくは飛び上がった。恐る恐る振り返ると、そこには彼女がいた。
    南川桃(モモ)。同じクラスにいたけど、一度も口をきいたことがない女の子。
    女子のヒエラルキーでも頂点にいるのが当たり前のようなその子が、そのあとぼくに頼んできたのは、伝記を書くことだった。
    「伝記? だれの?」
    「わたしの」と彼女は言った。
    ぼくと彼女のあいだには、グランドキャニオン級の深い溝が広がっている。それを越えることはとてつもなく難しい。
    それでもぼくは、モモとの約束を果たすため、そしてこの「仕事」を完遂するため、ひっそりと、彼女へのインタビューを続けた。
    著者渾身の作品! これ以上ない青春物語!この愛が、どうか世界中の人々の心へ届きますように。
    いま、社会が抱えるさまざまな問題にも通じる、愛と平和を願うメッセージがこめられています。
    大ベストセラー作家によるまったく新しい「ぼくときみの物語」がいつか、世界を変えてくれるかもしれません。

  • 市川拓司(いちかわ・たくじ)
    1962年、東京都生まれ。2002年『Separation』でデビュー。03年刊行の『いま、会いにゆきます』はミリオンセラーとなる。他の作品に『そのときは彼によろしく』『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『こんなにも優しい、世界の終わりかた』などがある。

  • 樋口柚子(ひぐち・ゆず)
    1996年、東京都生まれ。2011年日韓アートフェスティバルで上演された映画『愛のしるし』(2011年)で映画初出演、初主演を務め、女優としての活動を開始。ドラマ『ヒガンバナ~警視庁捜査七課~』(日本テレビ/2016年)、『咲-Saki- 特別編』(TBS/2016年)、映画『咲-Saki-』(2017年)に出演。明治『チョコレート効果』、パーソルキャリア、アルバイトニュース『an』などの広告のほか、ORANGE POST REASON 『風しるべ』(2016年)のMVなどに出演。9月22日より全国公開の映画『あさひなぐ』に寒河江純役で出演している。