推薦文
役に対して、ひときわ深く、微細に追求する片岡仁左衛門。
そのこだわりを篠山紀信が4年をかけて写し撮った仁左衛門初の舞台写真集。
自ら語った芸談と併せてご覧ください。
実は、松嶋屋の旦那と私は母方の遠い親戚に当たるんです。以前旦那から教えていただいた時はびっくり。それなら私だってもっといい顔に生まれたかった(笑)。噺家は勉強のため歌舞伎を観なくてはいけないと教えられます。私も最初は勉強のつもり。だけど旦那の舞台を拝見しているうちにファンになってしまい、今ではただの「追っかけ」。客席からうっとりと見上げるばかりです。上方の芝居だけでなく、江戸の芝居でもいなせな感じがあって素敵です。大学一年の娘も旦那の大ファン。劇場でいつもブロマイドを買ってきます。私はさすがに買っている姿を見られたら恥ずかしいので我慢してきたけれど、写真集なら心おきなくうっとりできそう。本当に楽しみです。
林家正蔵さん 落語家
仁左衛門さんの舞台を拝見していて感じるのは、上方文化の厚み。今は何でも文化的なものは東京発信のように思われていますが、かつて上方が生んだ人形浄瑠璃や歌舞伎の素晴らしさを体現していらっしゃる。受け継ぐだけでなくご自分なりの工夫を加え、言葉を無駄なく磨きこんで、役柄に合わせてさまざまな声を使い分けていらっしゃいますね。独特の柔らかい美しさがあり、身を持ち崩した若旦那でもただヘラヘラした若旦さんではなく、品格を感じます。上方和事ならやはりこの方、と思うのです。
竹下景子さん 女優
僕が育った家は母や姉が伝統芸能をしていましたから、子供のころからよく父に祇園のお茶屋にも連れていかれました。南座の「顔見世」にも一家で通っていました。でも、自分から歌舞伎を観るようになったのは35歳を過ぎてから。以来ずっと仁左衛門さんの舞台を拝見しています。仁左衛門さんはもともと華がある上に、最近は「品」に「格」が加わった大きな役者さんになってこられたと思います。それでいて、素顔は本当にお茶目。二枚目だから黙っているとスッとしているけど、好奇心が旺盛で、納得するまで「ナンデ?」と質問されるんです。それが芸を厳しく追求する姿勢につながっているんでしょうね。
谷村新司さん 音楽家
『和樂』の連載で仁左衛門さんに芸談をうかがっていたときは、私も改めて芝居を勉強しなおしたような気分でした。 仁左衛門さんはどんな役でもご自分でじっくり考えて、なるほどと思われる工夫をなさいますね。ときには夜も寝ずに考えていらっしゃる。「女殺油地獄」でも、与兵衛が殺人に至る心理の変化を緻密に表現されるので、現代に通じる不条理劇になり得るのでしょう。仁左衛門さんが長い間考えてこられたことがたくさん詰まっているのが今回の写真集&芸談集。若い役者さんたちの教科書にもなる充実した仕上がりだと思います。
関容子さん エッセイスト
兄貴は、いろんな役ができる人なのに、僕の芝居ならどんな役でも付き合ってくれるんです。それは「お客さんが喜んでくれるなら」という気持ちがあるからなんだね。歌舞伎が大好きで、お客様のためにどうすればいいか、いつも考えているのは僕も同じ。だから兄貴とならいい芝居ができるんです。篠山紀信さんには、僕の勘三郎襲名披露興行のときにも撮影をお願いしました。芸談を聞き書きした関容子さんには『役者は勘九郎』を書いていただきました。素晴らしい仕事をされるお二人が関わった兄貴の写真集&芸談集。きっと素敵だろうな。
中村勘三郎さん 歌舞伎俳優
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