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2016.2.9

加害者による"手記"って、いったいなんなんだ? 『「少年A」被害者遺族の慟哭』

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加害者による"手記"って、いったいなんなんだ? 『「少年A」被害者遺族の慟哭』

殺人を犯した少年は、罪をどう償おうとしているのか、あるいは逃げようとしているのか――『「少年A」被害者遺族の慟哭』

 

「川崎中1殺害事件」が結審した。冒頭陳述で明らかになった殺害の様子は、予想以上に凄惨なものだった。加害者の少年やその家族から後悔や謝罪の弁は出たものの、他の少年事件の例を見ても、そのまま受け取るわけにはいかない。

 統計によると少年犯罪は減り続けているが、川崎中1殺害事件のような猟奇的な事件や動機が不可解なケースは、むしろ増えている印象がある。少年、とくに18歳未満は少年法で手厚く守られており、犯した罪と、量刑が釣り合わないように見えるケースが少なくない。遺族たちは口をそろえて「これでは無駄死にだ」「なぜ死刑や無期懲役にできないのか」と憤慨する。

 また、遺族に対する加害者側の対応も、ひどいケースが目立つ。"自己陶酔"し、"都合のいい理屈"ばかりこねた「神戸市連続児童殺傷事件」の「元少年A」による手記は、その典型例だろう。いったい彼らは本当に反省しているのだろうか? 罪を償う気持ちがあるのだろうか?

 残念ながら『「少年A」被害者遺族の慟哭』を読む限り、そうではないケースが多いようだ。被害者のところに謝罪にすら来ない、遺族の感情を逆撫でする言動を重ねる、「どうせすぐ出てこられる」と笑う――。遺族が歯がみするところが目に見えるようだ。

 そのほかにも……

「僕の事件をおもしろい小説にしたい、という遺族宛の手紙が来た」

「賠償金が13年間、1円も支払われなかった」

「加害者の母親は、『一度の過ちで息子の人生を棒に振りたくない』と言った」

「加害者は裁判中、笑っていた」

「殺された息子の母親を、加害者の父がカラオケに誘ってきた」

 ――どれも耳を疑うような話ばかりだ。

 本書では、少年に息子や娘の命を奪われた遺族たちに綿密な取材を重ね、殺人犯のその後と少年審判の実態に迫る!

"少年法"とは? そして"贖罪"とは? 深く考えさせる一冊。

 

小学館新書

『「少年A」被害者遺族の慟哭』

著/藤井誠二

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