神保町シアター

S14('39)／松竹大船／白黒／スタンダード／2時間4分

■監督：吉村公三郎■原作：岸田國士■脚本：池田忠雄■撮影：生方敏夫■音楽：早乙女光■美術：金須孝■出演：高峰三枝子、水戸光子、佐分利信、徳大寺伸、藤野秀夫、葛城文子

岸田國士の新聞小説を、この年デビューした吉村公三郎があえて戦時色を払拭して描いた恋愛映画。若者たちに熱狂的に受けいれられ、当時異例の再公開を繰り返した。

S16('41)／東宝／白黒／スタンダード／1時間51分

■監督：熊谷久虎■原作：上田廣■脚本：澤村勉■撮影：宮嶋義勇■音楽：スメル音楽研究所■美術：北猛夫、平川透徹■出演：丸山定夫、藤田進、原節子、北沢彪、藤輪欣司、馬野都留子

陸軍鉄道連隊の若い兵士と、彼に機関車の運転を教える省線のベテラン機関士の師弟愛を、蒸気機関車Ｃ58の雄姿とともに描く。原作の上田廣は鉄道省出身の作家。

S19('44)／松竹大船／白黒／スタンダード／1時間8分

■監督：川島雄三■原作・脚本：織田作之助『清楚』『木の都』■撮影：斉藤毅■音楽：大澤寿人■美術：小島基司■出演：佐野周二、田中絹代、三浦光子、笠智衆、日守新一、文谷千代子

南方から帰還した軍医が四人の女性に出会う。大阪を舞台に、織田作之助が自作を脚色した恋愛もので、川島雄三のデビュー作。ほのぼのとした心優しい作品である。

＊16mmで上映

S19('44)／松竹大船／白黒／スタンダード／1時間28分

■監督：木下惠介■原作：火野葦平■脚本：池田忠雄■撮影：武富善男■美術：本木勇■出演：田中絹代、笠智衆、上原謙、東野英治郎、三津田健、杉村春子

小倉を舞台に、病弱な国粋主義者の家庭と息子の出征を描く。出征する八百人もの隊列を、息子を求めてひたすら追う田中絹代を捉えたラストは、映画史上の名場面。

S58('83)／松竹・ホリ企画／カラー／ビスタ／2時間8分

■監督：木下惠介■原作：永井隆■脚本：木下惠介、山田太一■撮影：岡崎宏三■音楽：木下忠司■美術：芳野尹孝■出演：加藤剛、十朱幸代、大竹しのぶ、山口崇、淡島千景、神崎愛

長崎で被爆した放射線科の医師の手記をもとに、原爆への怒りを静かな日常描写を積み重ねながら描く。終幕に展開する原爆の地獄図が圧倒的な木下惠介監督の晩年の代表作。

S32('57)／独立映画／白黒／スタンダード／1時間51分

■監督：家城巳代治■原作：田宮虎彦■脚本：依田義賢、寺田信義■撮影：宮島義勇■音楽：芥川也寸志■美術：平川透徹■出演：三国連太郎、田中絹代、中村賀津雄、南原伸二、飯田蝶子、高千穂ひづる

女中を身ごもらせた粗暴な職業軍人が、体面のため彼女を妻とする。先妻の二人の息子と、妻とは名ばかりの後妻の二人の息子が同居する歪んだ軍人家庭の年代記。

＊16mmで上映

H16(2004)／パル企画ほか／カラー／ビスタ／1時間39分

■監督：黒木和雄■原作：井上ひさし■脚本：黒木和雄、池田眞也■撮影：鈴木達夫■音楽：松村禎三■美術：木村威夫■出演：宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

戦後三年経った広島で、原爆の惨禍を逃れたことへの罪悪感から幸せになることを拒否する娘と、それを何とかしたい父親との情愛に満ちた、不思議な生活を描く。

S22('47)／東宝／白黒／スタンダード／1時間58分

■監督：五所平之助■原作：高見順■脚本：植草圭之助■撮影：三浦光雄■音楽：服部良一■美術：松山崇■出演：高峰三枝子、龍崎一郎、北澤彪、田中春男、中北千枝子、谷間小百合

日曜日の神宮外苑で、恋人を待ち続けるひとりの復員兵。彼の回想によって、戦時中に引き裂かれた男女の悲恋が描かれる。戦後の混乱期に登場した甘美な純愛映画。

S24('49)／大映東京／白黒／スタンダード／1時間35分

■監督：黒澤明■原作：菊田一夫『堕胎医』■脚本：黒澤明、谷口千吉■撮影：相坂操一■音楽：伊福部昭■美術：今井高一■出演：三船敏郎、三條美紀、千石規子、志村喬、野村謙二郎、中北千枝子

手術中の些細な事故から梅毒に感染した軍医。戦後人知れず病と闘う彼の前に、病気を移した男が現れる。まじめなインテリを演じてもかっこいい三船敏郎が見もの。

S27('52)／松竹大船／白黒／スタンダード／1時間38分

■監督：渋谷実■原作：井伏鱒二■脚本：斎藤良輔■撮影：長岡博之■音楽：吉沢博、奥村一■美術：浜田辰雄■出演：柳永二郎、三国連太郎、鶴田浩二、佐田啓二、淡島千景、角梨枝子

いまだ焼跡が残る東京の一隅を舞台に、休診日に次々と現れる患者にてんやわんやの老医師を描く。新劇の名優も大挙出演の豪華な群像劇で、戦後の世相を活写する。

S32('57)／東宝／白黒／スタンダード／59分

■監督：千葉泰樹■原作：林芙美子■脚本：笠原良三、吉田精彌■撮影：西垣六郎■音楽：伊福部昭■美術：中古智■出演：山田五十鈴、三船敏郎、淡路恵子、田中春男、多々良純、村田知英子

シベリアにいる夫の帰りを待つ女と、シベリア帰りの男の切ない愛の物語。戦争の傷痕のいえない時代を懸命に生きる男女の姿を、葛飾や浅草の風景の中で描く。

S40('65)／大映東京／白黒／シネスコ／1時間33分

■監督：増村保造■原作：吉田絃二郎■脚本：新藤兼人■撮影：秋野友宏■音楽：山内正■美術：下河原友雄■出演：若尾文子、田村高廣、成田三樹夫、佐々木孝丸、殿山泰司、早川雄三

日露戦争で負傷し帰還した夫を、再び戦地に送らないために妻のしたことは…。大正から昭和初期の人気作家吉田絃二郎の反戦小説を映画化。狂おしい極限の愛を描く。

S43('68)／東京映画／白黒／シネスコ／2時間10分

■監督：小林正樹■原作：遠藤周作『どっこいショ』■脚本：廣澤榮■撮影：岡崎宏三■音楽：武満徹■美術：小島基司■出演：藤田まこと、新珠三千代、佐藤慶、奈良岡朋子、黒沢年男、三島雅夫

戦時中に学徒動員され、今は特許事務所を営む男の前に、憎んでいたかつての上官が現れる。経済成長期の世相の中で、戦中派のやるせない心情をしみじみと描く。

S51('76)／芸苑社／カラー／スタンダード／3時間

■監督：山本薩夫■原作：山崎豊子■脚本：山田信夫■撮影：黒田清己■音楽：佐藤勝■美術：間野重雄■出演：仲代達矢、丹波哲郎、田宮二郎、八千草薫、高橋悦史、山形勲

シベリアに11年間抑留された陸軍中佐が、商社マンに転身し、自衛隊の次期主力戦闘機の熾烈な商戦を戦い抜く。経済戦争の戦士となったエリート軍人の戦後史。

S14('39)／日活多摩川／白黒／スタンダード／1時間59分

■監督：田坂具隆■原作：火野葦平■脚本：笠原良三、陶山鐵■撮影：伊佐山三郎、横田達之■音楽：中川榮三■装置：柴田篤二■出演：小杉勇、井染四郎、伊澤一郎、見明凡太朗、長尾敏之助、山本礼三郎

火野葦平の従軍記の映画化。中国大陸をひたすら行軍する大部隊を、現地ロケの圧倒的迫力で描く。一般庶民の男たちが兵隊へと変貌を遂げるさまに戦争の真実がある。

S25('50)／東宝／白黒／スタンダード／1時間50分

■監督：谷口千吉■原作：田村泰次郎『春婦傳』■脚本：谷口千吉、黒澤明■撮影：三村明■音楽：早坂文雄■美術：松山崇■出演：池部良、山口淑子、小澤榮、伊豆肇、田中春男、清川荘司

中国戦線で捕虜となった兵隊が、彼を愛する慰問団の歌手とともに原隊に復帰するが…。悪の権化のような中尉を登場させ、軍律の非情を告発した雄渾の反戦恋愛劇。

S27('52)／新星映画社／白黒／スタンダード／2時間8分

■監督：山本薩夫■原作：野間宏■脚本：山形雄策■撮影：前田実■音楽：団伊玖磨■美術：川島泰造、平川透徹■出演：木村功、下元勉、岡田英次、高原駿雄、三島雅夫、金子信雄

敗戦前年、陸軍刑務所から釈放された四年兵が大阪の連隊に復帰する。兵営の中の非人間的な日常を、様々な出自の男たちの群像の中で描く。原作発表と同年の公開。

S31('56)／新鋭プロ／白黒／スタンダード／1時間50分

■監督：小林正樹■脚本：安部公房■撮影：楠田浩之■音楽：木下忠司■美術：中村公彦■出演：三島耕、浜田寅彦、岸惠子、小林トシ子、信欣三、伊藤雄之助

巣鴨プリズンに収監されたＢＣ級戦犯を描く作品。53年の完成だが、対米配慮から公開されたのは三年後。同名のＢＣ級戦犯の手記をもとに、安部公房が脚色した。

S38('63)／松竹大船／カラー／シネスコ／1時間40分

■監督：野村芳太郎■原作：棟田博■脚本：野村芳太郎、多賀祥介■撮影：川又�ｴ■音楽：芥川也寸志■美術：宇野耕司■出演：渥美清、長門裕之、藤山寛美、桂小金治、左幸子、高千穂ひづる

三度の飯に風呂まで入れる軍隊を、天国だと思う気のいい男を、売り出し中の渥美清が演じた喜劇。読み書きもできない最下層の男を通して十五年戦争と戦後を綴る。

S40('65)／日活／白黒／シネスコ／1時間36分

■監督：鈴木清順■原作：田村泰次郎■脚本：高岩肇■撮影：永塚一榮■音楽：山本直純■美術：木村威夫■出演：野川由美子、川地民夫、玉川伊佐男、小沢昭一、石井富子、初井言榮

『曉の脱走』のリメイクだが、より原作に忠実にヒロインを慰安婦とし、極限状態の中の激しい愛を描く。鈴木清順と野川由美子の『肉体の門』に続く田村泰次郎もの。

S40('65)／大映東京／白黒／シネスコ／1時間43分

■監督：増村保造■原作：有馬頼義『貴三郎一代』■脚本：菊島隆三■撮影：小林節雄■音楽：山本直純／■美術：下河原友雄■出演：勝新太郎、田村高廣、淡路恵子、内田朝雄、北城寿太郎、成田三樹夫

ソ満国境の連隊を舞台に、軍隊への反逆を痛快なピカレスクドラマに仕上げた異色の戦争映画。勝新太郎と田村高廣のコンビが絶妙で、以後人気シリーズに発展した。