神保町シアター

S14('39)／東宝京都／白黒／スタンダード／1時間13分

■監督：石田民三■原作：吉屋信子『天国と舞妓』■脚本：鈴木紀子■撮影：山崎一雄■音楽：鈴木静一■装置：河東安英■出演：高峰秀子、清水美佐子、葦原邦子、林喜美子、進藤英太郎、三條利喜枝

人気雑誌「少女の友」で連載された少女小説の映画化。大阪を舞台に、運命に翻弄される花街の娘を15歳の高峰秀子が鮮烈に演じる。思春期の揺れ動く少女たちの機微を描く、少女映画の金字塔。

S27('52)／大映東京／白黒／スタンダード／1時間56分

■監督：久松静児■原作：吉屋信子■脚本：水木洋子■撮影：高橋通夫■音楽：古関裕而■美術：柴田篤二■出演：田中絹代、船越英二、乙羽信子、三橋達也、三條美紀、山村聡

文学賞を受賞し高く評価された、吉屋の戦後の代表作で、障害を持つ心優しき名家の当主と、彼を献身的に支える妻の愛情物語。難役に挑んだ主人公役の船越英二の見事な芝居にご注目。

S31('56)／東宝／白黒／スタンダード／46分

■監督：千葉泰樹■原作：吉屋信子■脚本：菊島隆三■撮影：山田一夫■音楽：伊福部昭■美術：中古智■出演：加東大介、津島恵子、宮口精二、中村伸郎、中田康子、中北千枝子、堺左千夫

女流文学者賞を受賞した吉屋の短編小説を、東宝の中編映画路線"ダイヤモンド・シリーズ"第一回作品で映画化。ガス代集金人が、困窮した美貌の人妻の家を訪れ…。欲望が招く恐怖を描く背筋も凍る逸品。

＊東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

S33('58)／東宝／カラー／シネスコ／1時間38分

■監督：鈴木英夫■原作：吉屋信子『花』■脚本：池田忠雄、杉本彰、沢村勉■撮影：飯村正■音楽：芥川也寸志■美術：河東安英■出演：司葉子、宝田明、草笛光子、千秋実、杉村春子、長岡輝子、加藤治子

遭難死した弟に代わり華道の家元を継いだ女性師匠(司)が、歯科医(宝田)と恋に落ちて…。吉屋の原作を、戦前に次ぎ再映画化した端正なメロドラマ。仕事と愛の間で苦悩する和服姿の司の美しさが映える。

S43('68)／日活／カラー／シネスコ／1時間32分

■監督：斎藤武市■原作：吉屋信子『女の教室』■脚本：三木克巳、長谷川公之■撮影：山崎善弘■音楽：小杉太一郎■美術：坂口武玄■出演：吉永小百合、浜田光夫、和泉雅子、十朱幸代、山本陽子、山内賢

戦前に原節子出演で映画化もされた、女性の自立を描いた長篇小説『女の教室』を、現代に置き換え脚色。女子医大に通う七人の女学生の青春群像で、小百合ら人気女優が顔を揃える華やかな一本。

S27('52)／大映東京／白黒／スタンダード／1時間28分

■監督：成瀬巳喜男■原作：林芙美子■脚本：田中澄江■撮影：峰重義■音楽：斎藤一郎■美術：仲美喜雄■出演：高峰秀子、香川京子、浦辺粂子、三浦光子、村田知英子、根上淳

父親違いの四人兄妹の末娘(高峰)が、血縁のしがらみから抜け出そうとするが――。絶妙の相性だった原作・林、監督・成瀬の数々の名作の中で、複雑な家族模様を辛辣かつ繊細に綴る傑作。高峰の好演が抜群。

S32('57)／東宝／白黒／スタンダード／59分

■監督：千葉泰樹■原作：林芙美子■脚本：笠原良三、吉田精彌■撮影：西垣六郎■音楽：伊福部昭■美術：中古智■出演：山田五十鈴、三船敏郎、淡路恵子、田中春男、多々良純、村田知英子

復員しない夫を待つ人妻(山田)とシベリアから復員した男(三船)が、戦後の混乱期に出会い…。孤独を抱えた女と男の短い交情を、千葉監督が無駄なく描き切った、切なくも至高の感動に震える名篇。

S13('38)／東京発声／白黒／スタンダード／1時間21分

■監督：豊田四郎■原作：林芙美子■脚本：八田尚之■撮影：小倉金弥■音楽：今沢将矩■美術：河野鷹思■出演：林文雄、栗島すみ子、逢初夢子、市川春代、山口勇、藤井貢

母親(栗島)の再婚相手に馴染めず、親類の家をたらい回しにされる息子の姿を描く。一躍人気作家となった時期の林の短編小説の映画化で、名匠・豊田監督が、孤独な少年の心をこまやかに綴る。

S37('62)／宝塚映画／白黒／シネスコ／2時間3分

■監督：成��巳喜男■原作：林芙美子、菊田一夫（舞台脚本）■脚本：井手俊郎、田中澄江■撮影：安本淳■音楽：古関裕而■美術：中古智■出演：高峰秀子、田中絹代、宝田明、加東大介、小林桂樹、草笛光子

林の波瀾万丈な半生を描いた自伝的小説であり、今も愛され続けるベストセラーの映画化。森光子主演の舞台版とは違い、作家として生きる女の孤独を抒情的に描く。高峰の凄みある演技も必見。

S31('56)／日活／白黒／スタンダード／1時間30分

■監督：野口博志■原作：平林たい子■脚本：八木保太郎■撮影：永塚一栄■音楽：原六朗■美術：大鶴泰弘■出演：名和宏、石原裕次郎、山根寿子、香月美奈子、坪内美詠子、菅井一郎

裏社会に惹かれた女学生が目にしたヤクザの世界――。反骨の女流作家・平林の異色作を基にした文芸アクションで、若き裕次郎の荒削りな魅力も見所。鈴木清順監督『関東無宿』('63)は同じ原作の再映画化。

＊デジタル上映

S40('65)／日活／白黒／シネスコ／1時間45分

■監督：中平康■原作：円地文子■脚本：須藤勝人■撮影：山崎善弘■音楽：伊部晴美■美術：大鶴泰弘■出演：芦川いづみ、高橋昌也、沢村貞子、中尾彬、浦辺粂子、横山道代、山本陽子

婚期を逃した女が訪れた結婚相談所、そこには恐ろしい秘密があった…。女流作家ならではの生々しく辛辣な視点で描かれる、現代残酷物語。芦川が清純派の殻を破り濡れ場を披露した異色作。

S59('84)／東宝映画／カラー／ヴィスタ／1時間52分

■監督：市川崑■原作：宇野千代■脚本：市川崑、日高真也■撮影：五十畑幸勇■音楽：大川新之助、朝川朋之■美術：村木忍■出演：吉永小百合、石坂浩二、大原麗子、ミヤコ蝶々、香川三千、常田富士男

華麗なる恋愛遍歴でも知られた宇野千代の代表作を映画化。二人の女の間で揺れる一人の男―男女の複雑に絡み合う情念が官能的に描かれる大人の恋愛譚で、小百合と大原の妖艶な美の競演は見物。

S29('54)／新東宝／白黒／スタンダード／1時間39分

■監督：久松静児■原作：壺井栄『暦』■脚本：井手俊郎、中川百々代■撮影：鈴木博■音楽：斎藤一郎■美術：下河原友雄■出演：香川京子、杉葉子、田中絹代、轟夕起子、花井蘭子、三好栄子

舞台は小豆島、妙齢の末娘二人が実家を切り盛りする日向家。法事で五人の姉妹が久しぶりに集まることになったのだが…。『二十四の瞳』の壺井栄の原作を、庶民派・久松静児が丹念に描いた美しい佳篇。

＊デジタル上映

S33('58)／日活／白黒／シネスコ／1時間38分

■監督：斎藤武市■原作：原田康子『夜の出帆』■脚本：植草圭之助■撮影：横山実■音楽：牧野由多可■美術：坂口武玄■出演：森雅之、野添ひとみ、小林旭、渡辺美佐子、清水将夫、稲垣美穂子

年頃を迎えた美しい娘(野添)は、いつしか義父(森)への恋心を抱き始め…。『挽歌』の原作者・原田康子の短篇を脚色し映画化。野添の穢れなき瞳が切なさを加速させる禁断のメロドラマ。

＊デジタル上映

＊本作は原版の状態の関係で、画質が大変悪くなっておりますことを予めご了承ください。

H1('89)／東宝／カラー／ヴィスタ／1時間54分

■監督：降旗康男■原作：向田邦子■脚本：中村努■撮影：木村大作■音楽：朝川朋之■美術：村木忍■出演：高倉健、富司純子、板東英二、富田靖子、宮本信子、三木のり平

無二の親友、門倉(高倉)と水田(板東)。門倉は水田の妻(富司)を密かに愛していた…。名脚本家・向田の、昭和初期の人間模様を描いた連続ドラマの映画版。改名した富司の、銀幕復帰作として話題に。

S48('73)／芸苑社／白黒／スタンダード／1時間40分

■監督：豊田四郎■原作：有吉佐和子■脚本：松山善三■撮影：岡崎宏三■音楽：佐藤勝■美術：小島基司■出演：森繁久彌、高峰秀子、田村高廣、乙羽信子、浦辺粂子、篠ヒロコ

高齢者介護問題を世に知らしめた、有吉のベストセラーの映画化。妻に先立たれ、認知症が進んだ義父(森繁)の世話を、嫁(高峰)が一人で背負う事に…。森繁の迫真の演技と、献身的な高峰の姿が胸を打つ。

S42('67)／松竹大船／カラー／シネスコ／1時間35分

■監督：中村登■原作：平岩弓枝■脚本：平岩弓枝、中村登■撮影：竹村博■音楽：佐藤勝■美術：梅田千代夫■出演：新珠三千代、加賀まりこ、香山美子、森光子、早川保、平幹二朗、東野英治郎

上野の老舗の組紐屋で、異母姉妹の姉(新珠)と妹二人(香山、加賀)の間に跡目争いが起きて…。脚本家としても有名な直木賞作家・平岩が原作・脚本を手掛けた、和服と小物の色彩も美しい女性映画の佳篇。