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これまでの特集企画
上映期間:2008年1月19日(土)〜3月7日(金)
「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.1
中村登と市川崑「本の街・神保町」の映画館として、文芸映画を特集企画
第1弾は中村登と市川崑の顔合わせですぼくの二人のゴヒイキ監督 双葉十三郎
市川崑監督はデビュー当時から才気を認められていたが、その才気は画面の緻密さとその処理のスマートさにある。それはダイナミズムや力強さとは反対で、さわやかなスマートさといっていい。その的確な演出はショットのツナギ方にまで及び、気持ちのいい後味を生み出すこととなる。「金田一耕助」シリーズの成功のカギもそこにあったと思う。
中村登監督の魅力は市川監督の才気とは対照的に、ムードにある。柔らかく優しいムードである。登場人物たちをしっかりと、じっくりと、みつめていく演出によって心に沁みるようなムードが湧いてくる。それが極まったのが、祇園祭や紀州の風物の中でおだやかにドラマが展開される「古都」や「紀ノ川」だ。彼独自の感受性の豊かさがゆっくりと伝わってくるのである。
中村登
●1913(大正2)年、東京生まれ。'36年、東京帝国大学文学部英文科を卒業後、蒲田から移転したての大船撮影所に助監督として入社。島津保次郎、吉村公三郎につく。'41年監督デビュー。オールスター映画『我が家は楽し』('51)が、大船調の復活と好評、出世作となる。以後、大船の中堅監督として活躍、『集金旅行』('57)は傑作喜劇として今なお高く評価されている。
●60年代に入り、小津安二郎の死去と木下恵介が松竹を離れる中で、撮影の成島東一郎、編集の浦岡敬一、そしていち早く抜擢してきた音楽の武満徹らのスタッフを結集し『古都』('63)、『紀ノ川』('66)などの文芸大作を放ち、松竹の屋台骨を支える巨匠として活躍した。日中合作映画『未完の対局』準備中の'81(昭和56)年、癌のため死去。70年代の映画斜陽期を乗り越え、生涯現役を貫いた。その端正かつ鮮やかな作風は「映画の教科書」と評されている。
●他の代表作に『河口』('61)、『二十一歳の父』('64)、『夜の片鱗』('64)、『智恵子抄』('67)、『わが恋わが歌』('69)などがある。
市川崑
●1915(大正4)年、三重県生まれ。大阪・市岡商業卒業後の'33年、J・Oスタジオのトーキー漫画部に入社。アニメの技法を身に付ける。J・Oが東宝京都撮影所に変貌を遂げる過程で劇映画の助監督に転身、'39年東京砧撮影所に移り、中川信夫、阿部豊のチーフを務める。
●戦後の'48年、監督デビュー。'53年の風刺喜劇『プーサン』、日本映画離れした恋愛劇『愛人』で頭角を現す。'55年に日活に移籍し、『ビルマの竪琴』('56)がベネチア映画祭サン・ジョルジオ賞を受賞。'56年大映に移籍し、『炎上』('58)、『おとうと』('60)、『破戒』('62)など、日本映画史上の名作を連打し、黄金期を迎える。
●物議をかもした傑作ドキュメンタリー『東京オリンピック』('65)の後、しばし映画製作の第一線から遠ざかるが、'76年の『犬神家の一族』で華々しい復活を遂げる。以後、傑作『細雪』('83)を経て、現在も旺盛な活動を継続中。
●夫人は終生市川を支えた脚本家の和田夏十(わだなっと)(1920-1983)。市川と和田の共同ペンネームは久里子亭(クリスティー)。上映作品リスト
N1.「我が家は楽し」 昭和26年 松竹大船/モノクロ
N2.「女の一生」 昭和30年 松竹大船/モノクロ
N3.「白い魔魚」 昭和31年 松竹大船/カラー
N4.「朱と緑」 昭和31年 松竹大船/モノクロ
N5.「集金旅行」 昭和32年 松竹大船/カラー
N6.「ボロ家の春秋」 昭和33年 松竹大船/カラー
N7.「顔役」 昭和33年 松竹大船/カラー
N8.「春を待つ人々」 昭和34年 松竹大船/カラー
N9.「いたづら」 昭和34年 松竹大船/モノクロ
N10.「明日への盛装」 昭和34年 松竹大船/モノクロ
N11.「いろはにほへと」 昭和35年 松竹大船/モノクロ
N12.「波の塔」 昭和35年 松竹大船/カラー
N13.「斑女(はんにょ)」 昭和36年 松竹大船/カラー
N14.「河口」 昭和36年 松竹大船/カラー
N15.「愛染かつら」 昭和37年 松竹大船/カラー
N16.「古都」 昭和38年 松竹京都/カラー
N17.「結婚式・結婚式」 昭和38年 松竹大船/カラー
N18.「二十一歳の父」 昭和39年 松竹大船/カラー
N19.「夜の片鱗」 昭和39年 松竹大船/カラー
N20.「紀ノ川」 昭和41年 松竹大船/カラー
N21.「惜春」 昭和42年 松竹大船/カラー
N22.「智恵子抄」 昭和42年 松竹大船/カラー
N23.「日も月も」 昭和44年 松竹大船/カラー
N24.「わが恋わが歌」 昭和44年 松竹大船/カラー
N25.「三婆」 昭和49年 東京映画/カラー
K1.「あの手この手」 昭和27年 大映京都/モノクロ
K2.「プーサン」 昭和28年 東宝/モノクロ
K3.「天晴れ一番手柄 青春銭形平次」 昭和28年 東宝/モノクロ
K4.「愛人」 昭和28年 東宝/モノクロ
K5.「女性に関する十二章」 昭和29年 東宝/モノクロ
K6.「青春怪談」 昭和30年 日活/モノクロ
K7.「こころ」 昭和30年 日活/モノクロ
K8.「ビルマの竪琴」 昭和31年 日活/モノクロ
K9.「処刑の部屋」 昭和31年 大映東京/モノクロ
K10.「日本橋」 昭和31年 大映京都/カラー
K11.「満員電車」 昭和32年 大映東京/モノクロ
K12.「穴」 昭和32年 大映東京/モノクロ
K13.「炎上」 昭和33年 大映京都/モノクロ
K14.「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」 昭和34年 大映東京/カラー
K15.「鍵」 昭和34年 大映京都/カラー
K16.「野火」 昭和34年 大映東京/モノクロ
K17.「ぼんち」 昭和35年 大映京都/カラー
K18.「おとうと」 昭和35年 大映東京/カラー
K19.「黒い十人の女」 昭和36年 大映東京/モノクロ
K20.「破戒」 昭和37年 大映京都/モノクロ
K21.「雪之丞変化」 昭和38年 大映京都/カラー
K22.「太平洋ひとりぼっち」 昭和38年 日活、石原プロモーション/カラー
K23.「吾輩は猫である」 昭和50年 芸苑社/カラー
K24.「犬神家の一族」 昭和51年 角川春樹事務所/カラー
K25.「悪魔の手毬唄」 昭和52年 東宝映画/カラー
K26.「細雪」 昭和58年 東宝映画/カラー
K27.「おはん」 昭和59年 東宝映画/カラー
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