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神保町シアター

これまでの特集企画

川本三郎編 映画の昭和雑貨店
「昭和30年代ノスタルジア」

1. あした来る人

カラコルム遠征を目指す登山家とその妻、そして銀座のブティックの女性店主らによる恋愛模様。鬼才川島の作品中もっとも端正な文芸映画で、和装の月丘と洋装(森英恵による)の新珠が美を競う。
◆30年代見どころ→<銀座><ファッション><羽田空港><日活ホテル>

2. 男ありて

家庭を犠牲にし野球一筋の老監督と、それでも彼を支えた家族の物語。遠征に明け暮れるプロ野球のリアルな日常描写がすばらしい名作。妻とのデートに戸惑う「勝負の鬼」を演じる志村の名演に酔う。
◆30年代見どころ→<プロ野球><縁側のある家><計算尺><少女歌劇>

3. 渡り鳥いつ帰る

向島の遊廓「鳩の街」を舞台に、娼家の主人に納まった男と女将、そして様々な境遇の娼婦たちを通して人生の浮き沈みを描いたオールスター映画。荷風作品の最初の映画化で、名画座の定番作品。
◆30年代見どころ→<赤線>

4. 洲崎パラダイス 赤信号

洲崎遊廓の手前、洲崎橋のたもとの一杯飲み屋に流れ着いた文無しワケ有り男女の切ない日々を活写した川島の代表傑作。ロケとセットを巧みにつなぎながら、今は無き悪所の風景を堪能させてくれる。
◆30年代見どころ→<勝鬨橋><洲崎パラダイス><スクーター><そばの出前>

5. 永すぎた春

古本屋の娘と重役の息子が婚約。大学卒業までは清い交際を誓い合うが、誘惑や障害がふたりを待ち受けていた。流行語にもなった三島由紀夫の小説の映画化で、当時のモラルとの葛藤が綴られる。
◆30年代見どころ→<自由恋愛><古本の競り市><デザイナー>

6. 鰯雲

厚木近郊の農村地帯を舞台に、地縁血縁に縛られた封建的社会に押し寄せる新しい時代の波を捉えた成瀬には珍しい農民映画。その上カラーもシネスコも初の取り組み、脚本の橋本も初顔合わせだ。
◆30年代見どころ→<農村の近代化><厚木近郊><マイカー>

7. 東京の瞳

「ホンダ・モータース」を舞台に、輸出部門で働く若者と商業デザイナーの姉、そして社長令嬢らの恋の行方を描く。この年7月、スーパーカブを発表することになるホンダとタイアップした正月映画。
◆30年代見どころ→<オートバイ><海外宣伝ポスター>

8. 巨人と玩具

企業の苛烈な宣伝合戦をスピーディーに描いた増村初期の代表作。CMで一躍マスコミの寵児になる小娘と翻弄される若い宣伝部員のけたたましい狂騒曲。高度経済成長直前でもこんなにすごかった。
◆30年代見どころ→<CM時代の始まり><宇宙ブーム><テレビ>

9. 一粒の麦

福島の中学から集団就職し、様々な境遇の中でけなげに生きていく子どもたちと、彼らを見守る就職担当の教師の交流を描く。上野駅の大群衆など、当時の貴重な風物や社会問題を見事に捉えている。
◆30年代見どころ→<就職列車><お化け煙突><東京下町><オート三輪>

10. たそがれの東京タワー

銀座の洋裁店に住込みで働く孤児院育ちのお針子が、閉店後に売り物のコートを着て東京タワーに昇ったことから始まる可憐な恋物語。夜の東京タワーでしか会えない娘に恋い焦がれた青年は…。
◆30年代見どころ→<東京タワー><銀座の洋裁店>

11. 母のおもかげ

母の形見の伝書バトでさびしさを紛らわし、水上バスの運転手の父と二人で暮らす道夫に、新しい母と妹ができる。童心を描くことに定評のあった巨匠清水宏の遺作で、その本領を発揮した母もの。
◆30年代見どころ→<隅田川のポンポン船><佃島><伝書バト>

12. 東京の孤独

オーナーとの確執を抱える監督が、新人テストに現れた投手に惚れ込むが、彼は姿を消してしまう。プロ野球を舞台に勝負師たちの確執を興趣あふれる展開で描く。アキラとジョーの野球対決も見もの。
◆30年代見どころ→<野球中継(小西得郎、志村正順、南村侑広)>

13. 二人の息子

大学を出たエリートの兄と下積みの弟が、年老いた両親の処遇を巡って対立する。数々の逆境に向かい合う加山の凛とした明るさが感動を呼ぶ秀作。『大番』で知られるベテラン千葉の代表作のひとつ。
◆30年代見どころ→<サラリーマン><団地><電化製品>

14. 婚期

嫁と二人の小姑の家庭内闘争を描いた傑作コメディ。若尾と北林を筆頭に嬉々として演じる女優陣が最高。水木のオリジナル脚本を得た吉村喜劇の代表作で、後にTVと映画双方でリメイクされた。
◆30年代見どころ→<小姑><結婚式場><お見合い>

15. やっちゃ場の女

築地の青果市場、通称やっちゃ場を舞台に、仲買商を取り仕切る娘のけなげな決断の物語。築地や佃島の風景、そして下町気質がふんだんに描写される。冒頭のお通夜シーンや冷や酒一気飲みも秀逸。
◆30年代見どころ→<築地・佃島・隅田川><佃の渡し><両国花火大会><住込み店員>

16. 風と樹と空と

青森の高校から集団就職し、東京でお手伝いさんになった多喜子。さっそく一家に溶け込んだ底抜けに明るい彼女とその仲間たちの東京生活を綴る明朗篇。エッチな科白も石坂洋次郎ものならでは。
◆30年代見どころ→<集団就職><羽田空港><日比谷公園>

17. ALWAYS 三丁目の夕日

東京タワー建設中の昭和33年の東京を、CGを駆使して見事によみがえらせた大ヒット作品。人情味あふれる下町の人々の織りなす物語が心地よい涙を誘う。いよいよ登場する続篇を前に特別上映!
◆30年代見どころ→<集団就職><東京タワー><駄菓子屋><テレビ>