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抱き桜
著/山本音也
戦争の傷跡を残す和歌山市。ある夏の日、紀ノ川の筏師を束ねて隆盛を極めるも、戦後零落した男のひとり息子・広之と、大阪から夜逃げしてきた一家の男の子・勝治が出会った。川や城跡での遊び、淡い初恋、勝治の母の水死事故、大阪に住む広之の生みの親を訪ねる1日。きらきらひかる、しかし哀しさを含んだ数々の出来事は、それぞれの家族に見守られながらも、心によるべなさを抱く少年たちを結びつけ、広之の父が語る「人間の魂は、吉野の山に咲き誇る桜の花びらに抱かれている」という言葉の意味を教えた。 生きることは切なくて、魂はひりひりと泣く――。それでも人は生きていく。人の世の哀歓を見事にとらえ、読む者の心をしっとりと包みこむ、書き下ろし小説。
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